目次:

1.2025年の崖とは?

2025年の崖(Cliff of 2025)は、通常、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関連する概念の一部として使われる表現です。DXは組織がデジタル技術を活用してビジネスプロセスを変革し、新たな価値を生み出す取り組みを指します。2025年の崖は、特に組織がデジタル化の重要性に焦点を当てるべき時期や期限を指すことがあります。

この言葉は、2025年に向けて多くの企業や組織が直面するであろうデジタルトランスフォーメーションに関する課題や変革の必要性を強調しています。2025年には、技術の進化や市場の変化が加速し、従来のビジネスモデルが通用しづらくなる可能性があるため、それに対応するための戦略的な取り組みが求められるとされています。

この表現は、組織がデジタル技術を効果的に導入し、変革を進めることが不可欠であるという警告や認識を表しています。企業がこの「崖」を乗り越え、デジタル化に成功するためには、戦略の見直し、組織文化の変革、新しい技術の導入などが必要です。

2。 DXレポートから2025年の崖の問題点

2.1 DXレポートとは?

「DXレポート」とは、経済産業省が2018年5月に設置した「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」がとりまとめたレポートを指します。

経済産業省はその後、2020年8月にコロナ禍などによる社会環境・事業環境変化を受けて「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会(以下、DX研究会)」を新たに設置し、国内のDX推進に向け、新たなレポートやガイドライン、指標などを作成・公表しています。

2022年6月現在、DX研究会からは以下の3つのレポートが公表されています。

•『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』(2018年9月)

URL:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf        

 •『DXレポート2(中間取りまとめ)』(2020年12月)

URL:https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf

•『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』(2021年8月)

URL:https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210831005/20210831005-1.pdf

2.2  2025年の崖での問題点

DXレポート内で指摘されている日本企業のITにおける問題点には、下記のようなものが挙げられます。

一、経営層の危機意識とコミットにおける課題

多くの企業経営者は、将来的な成長や競争力強化のためにDXが必須であることを認識しています。しかしその一方で、具体的にどのようにビジネスを変革していくかについては明確になっていない、あるいは模索中であることが多いと指摘されています。結果、トップからの「AIを使って何かできないか?」「『蓄積されたビッグデータを活用したい」といった曖昧な指示によって、ビジネスの革新につながらないPoC(概念実証)が繰り返されているという現状があります。

二、既存ITシステムの老朽化(Aging of Existing IT Systems

これは、ITシステムが時間とともに古くなり、技術的な進化や変更に対応できなくなる現象を指します。古いハードウェアやソフトウェアの使用、レガシーコードの増加、セキュリティの問題などが原因で発生することがあります。老朽化したシステムはメンテナンスが難しく、新しい要件や技術への対応が制限されることがあります。

三、人材不足の進行

 2025年までには、基幹系システムを支える人材が退職や高齢化の影響を受け、IT人材の不足が約43万人にまで広がると言われています。レガシーシステムのプログラミング言語に精通した人材や最新のIT技術に対応した人材が不足し、結果として最新の技術に基づいたシステムの更新が難しくなるという懸念があります。

DXレポート2.1においても、ユーザー企業のIT人材の育成が進まないという問題が指摘されています。ユーザー企業がシステム開発をベンダーに依存し、自社内でシステムに関する知識が蓄積されない場合、DXが遅れる要因となります。

四、ユーザー企業とベンダー企業の関係性

日本ではユーザー企業よりもベンダー企業に多くのITエンジニアが所属しており、そもそもノウハウが社内に蓄積しにくいという土壌があります。そのため、社内システムの開発においては、要となる要件定義からベンダーに依頼するというケースも少なくありません。DX推進にはシステム開発においてユーザー企業のコミットメントが重要なのですが、このような状況では困難です。また、ユーザー企業自体がシステムにどのような課題があるかを把握できず、開発中に課題が明らかになり開発期間や費用の増大を招くというケースも。転じて、ユーザー企業とベンダー企業の係争に発展する事態も発生しています。

3. 対策ポイント

DX推進ガイドラインの構成案

『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』(2018年9月)によるとガイドラインは以下の目的を想定している。

・ 経営者がDXを実現する上で、基盤となるITシステムに関する意思決定に関して押さえるべき事項を明確にすること

・ 取締役会メンバーや株主が DX の取組みをチェックする上で活用できること

 例えば、コーポレートガバナンスに関するガイダンスにも位置づけ、経営者や社外取 締役、株主による活用を促すことを検討する。 現在の構成案としては以下に示すように、「経営戦略における DX の位置づけ」とこれを実現するためのアプローチである「DX 実現に向けた新たなデジタル技術の活用やレガシーシステム刷新のための適切な体制・仕組み」や「実行プロセス」を盛り込むこととする。

ITシステム刷新

DXを推し進めていくにあたり、モダンなITシステムへの刷新は必須となりますが、それには膨大な時間とコスト、そしてリスクが伴います。DXレポートではそれらを最低限に抑えるために次のことを提示しています。

  • 刷新後のシステムが実現すべきゴールイメージを共有すること
  • 不要なシステムを廃棄し、刷新前に軽量化すること
  • マイクロサービス技術などの活用で将来的な拡張性を確保すること
  • 事業部間の協調領域における共通プラットフォームの構築

DX人材の育成・確保

デジタル技術の進展の中で、DXを実行することのできる人材の育成と確保は各社にとって最重要事項であります。ユーザ企業、ベンダ企業それぞれにおいて、求められる人材スキル を整理し、必要な対応策を講じていくことが必要であります。

・アジャイル開発の実装そのものが、ユーザ企業の人材にあって開発手法を学び、バンダー企業の人材にあっては開発に充事しながら業務を知ることに繋がり、ユーザ企業・ベンダー企業両方の人材育成にもなります。

・新たに整備された IT 技術者のスキル標準や情報処理技術者試験の活用により、上 記のような求められる IT 人材のスキルの明確化や、学び直しによる人材育成が進められることが期待されます。

・大学を含めた産学連携で人材育成を進めることも有効であります。企業にとっては、自 社のプロジェクトを大学とともに取り組むことにより、AI やデータ活用のスキルを実践的に獲得できるとともに、大学にとっても企業の持つデータを活用できる ため、研究ならびに教育の良い教材となります。

ベンダー企業と新たな関係

DX推進のためにはベンダー企業との関係性も新たなものにするべきでしょう。DXレポートでは、継続的なシステム再構築やアジャイル開発といったDXに適した形態に契約を見直すことを勧めています。

4.まとめ

レガシーシステムを使い続けている現在の日本企業は、経営面・技術面・人材面にそれぞれ問題を抱えています。その問題を解消しなければ大きな経済損失を招くとしているのが、「2025年の崖」です。問題解決のためには、各企業によるDX推進が急務となります。

ここまで説明してきたように、全社一丸となって真剣にDXと向き合わなければ、「2025年の崖」に関連した問題点を克服し、DXを推進していくことはできません。企業によっては、ITインフラや働き方改革にDXを取り入れ、ビジネスの変革を実現している企業もでています。

NALでは、お客様自身でDXビジョンを策定する段階でのサポートから実現までをお手伝いしています。専門家が伴走することで、段階的に無理なく、ノウハウを得ながら自社システムを刷新していくことが可能でしょう。